今回も、「子どもが死にたいと思うとき」についての調査結果をご報告します。どのような悩みを持っている子が、特にそのような気持ちになるのかお示ししましょう。
なんか、とてもつらくなりますね。でも、しっかりと先生から教えてもらって、私たち大人が、子どもたちにできることを考えていきたいです。
子どもの悩みと「死にたいと思う」気持ちの関連性を見てみましょう
①友だちとの悩み(回答:中学生12,630人、高校生9,043人)
友だちとの関係のことで悩みがありますか?
あなたは死にたいと思ったことがありますか?
友だちとの関係のことで悩みがある子が、中学生の4人に1人、高校生の5人に1人ですね。そして、友だちとの悩みを持っている子の半数以上が「死にたいと思ったことがある」のですね。
友だちやクラスメートから無視されると、死にたい気持ちが高まることがあります。クラスにはいろいろな子がいます。無理に周りに合わせる必要はありません。「一対一で安心できる友だちを見つける」ことや、「クラス以外で安心できるところを見つけましょう」と、伝えましょう。
②いじめの悩み(回答:中学生12,362人、高校生9,043人)
いじめのことで悩みがありますか?
あなたは死にたいと思ったことがありますか?
いじめのことで悩みがある子は、友だちとの悩みがある場合に比べてもっともっと死にたい気持ちが高まりますね。早く救ってあげたい……。どうしたらいいのですか?
いじめられているときは、勇気をもってSOSを出してください。きっと、そのSOSをキャッチしてくれる人がいます。SOSの出し方など、日頃から学校や家庭で話し合えておくといいですね。
③両親との悩み(回答:中学生12,411人、高校生9,043人)
両親との関係のことで悩みがありますか?
あなたは死にたいと思ったことがありますか?
両親との関係のことで悩んでいる中高生も多いですね。そして、両親との関係で悩んでいる子も、死にたいと思うことが結構、多いみたいですよ。
海外の調査でも家族関係の強さと死にたい気持ちがよく関係していることが報告されています。「誰かから守られている」という気持ちが大切です。でも、両親との関係に悩みがない子の中にも、死にたいと思う子がいることも知っていてください。
④性の悩み(回答:中学生12,337人、高校生9,043人)
性のこと(性交渉・自分の性など)で悩みがありますか?
あなたは死にたいと思ったことがありますか?
性(性交渉・自分の性など)のことで悩んでいる子も数%おられますね。やはり、この悩みも死にたいという気持ちを高めますね。
特に性別違和といって、自分の性(男性か女性か)に違和感を持っている人には、十分に相談にのってあげる必要があります。とても苦しんでおられますから。
⑤ネットいじめの経験(回答:中学生13,130人、高校生9,034人)
ネットでいじめにあったことはありますか?
あなたは死にたいと思ったことがありますか?
先、先生……。ネットいじめ、ひどくありませんか? めちゃくちゃ死にたいと思う気持ちが高いですよ。
そうです。統計の専門家に計算をしていただいたら、ネットいじめが最も死にたい気持ちにさせるリスクが高かったです。知らない間に、あっという間に中傷が広がるなど、本人が受けるダメージは他のいじめに比べてとても強いです。
なんとかしてください!
世界各国で同じ問題が起きています。安易な書き込みが人を傷つけることもあることや、被害に会ったときの対応の仕方など、子どもたちに早くから教えていくことも必要と思います。
⑥成績の悩み(回答:中学生12,814人、高校生9,043人)
成績のことで悩みがありますか?
あなたは死にたいと思ったことがありますか?
成績のことで悩みのある子は多いですね。中高生とも半数以上ですね。確か、学校が始まる新学期、特に夏休み後に、思いつめてしまう子が多いって、報道されていましたね。夏休み後に試験があるからですか?
学校に行くことのつらさは、決して成績や試験だけのことではないと思います。今回の調査結果では、成績の悩みは、その他の悩みや出来事に比べて、死にたい気持ちになる傾向は高くなかったようです。
⑦将来の進路の悩み(回答:中学生12,797人、高校生9,043人)
将来の進路のことで悩みがありますか?
あなたは死にたいと思ったことがありますか?
将来の進路のことで悩んでいる中高生も多かったですよね。6割前後もいます。しかし、これも他の悩みや出来事に比べると、死にたい気持ちを強く高めてはいませんね。
そうですね。でも、将来の進路のことで悩んで、気持ちが沈んだり、何もする気がなくなったりすると、注意が必要ですよ。
今回は、子どもたちのどんな悩みや出来事が、死にたい気持ちを高めるか示させていただきました。学校関係者、医療関係者、保護者の方々に知っておいて欲しいと思います。自殺の予防については、「的確にその気持ちをスクリーニングできる」こと、「その気持ちがどのくらい強いか評価して適切な支援を提供する」こと、そして「自殺予防のための介入的な保健教育が大切」だろうと思います。子どもの自殺率はやや増加していて、自殺は10~14歳の死因の第2位、15歳~19歳では第1位になっています。皆さんと一緒にこれからも、子どもの自殺を防ぐ方法を考えていきたいと思います。
次回、「高校生の性交経験と生活環境・保健指導について」の結果は、2017年11月下旬に公開予定です。
※本成果物は、平成28年度厚生労働省子ども・子育て支援推進調査研究事業の助成及び健やか親子21推進協議会の協力を受けて作成したものですが、記述内容につきましてはあくまでも当研究班の見解となります。
ご意見お待ちしております
今回のアンケート調査結果や、思春期の保健課題など、皆様からご意見がいただければ幸いです。
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